
「もうこの会社を辞めよう」
そう思って転職活動を始めたはずなのに、求人を調べたり面接を受けたりしているうちに、今の会社が以前より良く見えてきた。
そんな経験はありませんか?
「今の会社は給料が安いと思っていたけれど、他社もそれほど変わらない」
「人間関係には不満があるけれど、仕事には慣れている」
「転職先で一から仕事を覚えるくらいなら、今の会社の方がいいのかもしれない」
そして、ふと思うのです。
「本当に転職した方がいいのだろうか?」
転職活動を始めたことで、逆に今の会社の良さに気づくことがあります。
それ自体は悪いことではありません。
むしろ、今まで当たり前だと思っていた待遇や働き方を、客観的に評価できるようになった可能性があります。
ただし、一つ注意したいことがあります。
それは、今の会社が本当に良いと分かったのか、それとも転職への不安から良く見えているだけなのかという違いです。
この記事では、転職活動を始めてから迷い始めた20代・30代に向けて、今の会社が良く見える理由と、辞めるか残るかを判断する7つの基準を解説します。
最後には、今の会社と転職先を比較する具体的な方法も紹介します。
転職活動を始めると今の会社が良く見えるのはなぜ?
転職活動を始める前は、今の会社の不満ばかりが目につきます。
給料が上がらない。上司と合わない。仕事がつまらない。将来が不安。
ところが、いざ転職活動を始めると、考え方が変わることがあります。
その理由を4つに分けて考えてみましょう。
① 他社と比較して初めて今の会社の良さに気づく
例えば、年収400万円で働いている人がいるとします。
本人は「もっと給料の良い会社に転職したい」と考え、求人を探し始めました。
しかし、同じ地域・職種・経験年数の求人を調べると、年収350万〜420万円程度の募集が多かったとします。
この場合、現在の年収400万円は、本人が思っていたほど低い条件ではない可能性があります。
さらに、今の会社には次のようなメリットがあるかもしれません。
- 残業が少ない
- 有給休暇を取りやすい
- 通勤時間が短い
- 仕事の進め方を理解している
- 相談できる同僚がいる
こうした条件は、普段働いていると当たり前になりがちです。
転職活動によって他社と比較した結果、今の会社の価値を再発見することがあります。
これは、転職活動を始めたからこそ得られる大切な気づきです。
② 新しい環境への不安が大きくなる
今の会社なら、仕事内容も人間関係もある程度分かっています。
一方で、転職先には分からないことがたくさんあります。
「上司が厳しい人だったら?」
「仕事についていけなかったら?」
「入社後に聞いていた条件と違ったら?」
こうした不安が増えるほど、慣れた職場に安心感を覚えることがあります。
人は、未知の環境に対して慎重になりやすいものです。
ただし、安心できることと、自分に合っていることは必ずしも同じではありません。
今の会社に残りたい理由が、仕事内容や待遇への満足なのか、それとも変化への恐怖なのかを分けて考える必要があります。
③ 転職活動に疲れてしまった
転職活動は、想像以上にエネルギーを使うことがあります。
求人を探し、職務経歴書を作り、応募して、面接を受ける。
そのうえ、必ず採用されるわけではありません。
仕事が終わってから転職活動をしている人なら、休む時間も減ってしまいます。
そんな状態が続くと、
「もう転職活動をやめたい」
「今の会社でもいいかもしれない」
と感じることがあります。
しかし、これは今の会社に満足したからではなく、単に転職活動に疲れているだけかもしれません。
そんなときは、無理に結論を出さず、一度活動のペースを落としてみましょう。
疲れが落ち着いてから、改めて自分の気持ちを確認することが大切です。
④ 転職したい理由を忘れかけている
転職活動を始めたときには、明確な理由があったはずです。
例えば、
「残業が多くて家族との時間が取れない」
「仕事を頑張っても評価されない」
「将来につながる経験ができない」
といった理由です。
しかし、求人を探しているうちに、いつの間にか年収や会社の知名度ばかり気にするようになることがあります。
その結果、最初に解決したかった問題を忘れてしまうのです。
転職活動で大切なのは、今の会社より条件の良い会社を探すことだけではありません。自分が抱えている問題を解決できる会社を探すことです。
ここを見失わないようにしましょう。
転職するか今の会社に残るかを判断する7つの基準
今の会社が良く見えてきたとき、感情だけで転職をやめるのはおすすめしません。
反対に、転職活動を始めたからという理由だけで転職する必要もありません。
次の7つの基準で整理してみましょう。
判断基準① 転職したいと思った原因は解決したか
まず確認したいのは、転職を考えた原因です。
例えば、上司との人間関係に悩んでいた人が、部署異動によって働きやすくなったとします。
この場合、転職したい理由そのものが解消された可能性があります。
一方で、長時間労働に悩んでいた人が、求人探しに疲れただけで今の会社に残ろうとしているなら、問題は何も変わっていません。
次の質問を自分にしてみてください。
「転職活動を始める前に感じていた不満は、今も残っているだろうか?」
不満が解消されているなら、今の会社に残ることは十分に合理的な選択です。
しかし、何も変わっていないなら、なぜ転職をやめたいと感じるのか、もう少し整理する必要があります。
判断基準② 今の会社の良いところを具体的に説明できるか
「なんとなく今の会社が良く見える」
この感覚だけでは、判断材料として十分ではありません。
具体的に良いところを書き出してみましょう。
例えば、
- 同業他社より年収が高い
- 年間休日が多い
- 有給休暇を取りやすい
- 自分の裁量で仕事を進められる
- 人間関係が比較的良い
- 今後も専門性を高められる
こうした理由が明確なら、残る価値があります。
反対に、
「転職するのが面倒」
「新しい仕事を覚えたくない」
「面接で落ちるのが怖い」
といった理由ばかりなら、会社の良さではなく、変化への不安が大きくなっている可能性があります。
もちろん、不安を理由に今の会社に残ることが間違いというわけではありません。
ただし、自分が何を重視しているのかを理解してから判断しましょう。
判断基準③ 転職先で本当に改善できることは何か
転職すれば、すべての不満が解消するわけではありません。
例えば、年収が50万円上がっても、残業時間が毎月30時間増えるならどうでしょうか。
あるいは、仕事内容は希望どおりでも、通勤時間が片道1時間長くなる場合はどうでしょう。
何を改善したいかによって、良い転職の条件は変わります。
ここでおすすめなのが、希望条件を3つに分けることです。
絶対に譲れない条件
生活に必要な最低年収、勤務地、休日、健康に無理のない働き方など。
できれば実現したい条件
年収アップ、在宅勤務、資格取得支援、キャリアアップなど。
妥協できる条件
会社の知名度、オフィスの設備、細かな福利厚生など。
このように分けると、求人の魅力に振り回されにくくなります。
求人情報の具体的な確認方法は、求人票の見方がわからない20代30代へ|転職で失敗しないチェックポイント7選で詳しく解説しています。
判断基準④ 3年後も今の会社で働きたいと思えるか
目先の安心感だけでなく、少し先の未来を考えてみましょう。
3年後、今と同じ会社で働いている自分を想像してください。
そのとき、
「新しい仕事を任されている」
「専門知識が増えている」
「今より収入が上がっている」
「仕事と私生活を両立できている」
といった未来を描けるでしょうか。
もし前向きな未来を想像できるなら、今の会社に残ることも良い選択です。
一方で、
「3年後も同じ不満を抱えていそう」
「成長している自分が想像できない」
と感じるなら、環境を変えることを検討する理由になります。
ただし、将来を正確に予測することはできません。
大切なのは、今の会社で希望する未来に近づける具体的な機会があるかどうかです。
判断基準⑤ 転職しない場合のリスクも考えたか
転職のリスクは分かりやすいものです。
年収が下がるかもしれない。
仕事についていけないかもしれない。
人間関係が悪くなるかもしれない。
しかし、転職しない場合にもリスクがあります。
例えば、業界の変化に対応できる経験が身につかない、給与が長期間上がらない、働き方が改善されないといったことです。
もちろん、今の会社で経験を積むことが将来の転職に有利になる場合もあります。
だからこそ、転職する場合と残る場合の両方について、メリットとリスクを考えましょう。
判断基準⑥ 転職活動の疲れだけで判断していないか
応募しても書類選考に通らない。
面接でうまく話せない。
希望する求人が見つからない。
こうした経験が続くと、自信を失ってしまうことがあります。
そして、
「自分には転職なんて無理なのかもしれない」
と思ってしまうこともあるでしょう。
しかし、選考結果は応募先の条件や採用状況、経験との適合性などによって変わります。
不採用になったことだけで、自分の価値が低いと判断する必要はありません。
疲れているときには、活動を少し休んでも大丈夫です。
大切なのは、転職を諦めることと、一時的に休むことを区別することです。
判断基準⑦ 今の会社に残るなら何を変えるか決められるか
最後に考えたいのが、残る場合の行動です。
「やっぱり今の会社に残ろう」
そう決めたとしても、以前とまったく同じ働き方を続ければ、また同じ不満を感じる可能性があります。
例えば、
- 上司にキャリアについて相談する
- 部署異動を希望する
- 新しい仕事に挑戦する
- 資格取得を始める
- 働き方の改善を相談する
- 半年後に改めて転職を検討する
といった具体的な行動を決めておきましょう。
今の会社に残ることを、単なる現状維持ではなく、前向きな選択にすることが大切です。
【実践】今の会社と転職先を比較する方法
ここまで読んでも迷っている人は、実際に条件を比較してみましょう。
おすすめなのは、今の会社と気になっている求人を同じ基準で評価することです。
例えば、次のような表を作ります。
| 比較項目 | 今の会社 | 転職先A |
|---|---|---|
| 年収 | 400万円 | 450万円 |
| 年間休日 | 120日 | 125日 |
| 月平均残業 | 10時間 | 25時間 |
| 通勤時間(片道) | 20分 | 60分 |
| 仕事内容 | 慣れている | 希望する仕事 |
| 人間関係 | おおむね良好 | 不明 |
| 成長機会 | 限定的 | 期待できるが未確認 |
※数値は比較方法を説明するための架空の例です。
この表を見ると、転職先Aは年収が50万円高い一方、残業時間と通勤時間が増えます。
さらに、人間関係や成長機会については、入社するまで分からない部分もあります。
ここで重要なのは、年収が高いから転職する、という単純な判断をしないことです。
年収以外の条件も数値化する
例えば、通勤時間が片道20分から60分になる場合、往復で80分増えます。
月20日出勤すると仮定すれば、月に約27時間、通勤に使う時間が増える計算です。
一方で、希望する仕事内容に挑戦できることが、将来のキャリアにとって大きなメリットになる可能性もあります。
何を重視するかは人によって異なります。
家族との時間を大切にしたい人と、今は専門性を高めたい人では、選ぶ会社が違って当然です。
分からない条件は確認する
求人票だけでは分からないこともあります。
例えば、
「実際の残業時間はどれくらいか」
「入社後の教育体制はどうなっているか」
「どのような基準で昇給するのか」
といった点です。
面接や企業とのやり取りを通じて確認しましょう。
分からない部分を都合よく想像するのではなく、確認できた情報と未確認の情報を分けて比較することが大切です。
今の会社に残ると決めたら、転職活動は無駄になる?
結論からいうと、無駄にはなりません。
転職活動を通じて、次のようなことを知ることができるからです。
- 自分の経験を求めている企業があるか
- 今の年収が他社の求人条件と比べてどうか
- 自分に不足しているスキルは何か
- どのような働き方を実現したいか
- 今の会社のどこに満足しているか
これらは、今の会社で働き続ける場合にも役立つ情報です。
例えば、転職活動を通じてITスキルの必要性を感じたなら、今の会社に残りながら学習を始めることもできます。
あるいは、他社と比較して今の会社の待遇が良いと分かったなら、安心して仕事に集中できるかもしれません。
転職活動の成果は、必ずしも転職することだけではないのです。
まだ転職を決めきれていない人は、転職するか迷っている段階で転職活動していい?も参考にしてください。
それでも迷うなら、第三者に相談してみよう
自分一人で考えていると、どうしても今の会社への不満や転職への不安に気持ちが左右されます。
そんなときは、第三者の意見を聞くことも有効です。
家族や友人に相談する方法もありますが、転職市場について具体的に知りたい場合には、転職エージェントなどのキャリア相談サービスを利用する方法もあります。
例えば、
「今の年収は自分の経験に対して妥当なのか」
「今の会社に残って経験を積むべきなのか」
「希望する働き方ができる求人はあるのか」
といったことを相談できます。
ただし、転職エージェントは求人紹介を行うサービスでもあります。
紹介された求人への応募を急がず、自分の希望条件と照らし合わせて判断しましょう。
転職するか迷っている段階でも相談できる
転職エージェントに登録したからといって、必ず転職しなければならないわけではありません。
最初に「今の会社に残ることも含めて検討している」と伝えておくと、相談の目的が明確になります。
まずは自分の選択肢を知りたい人は、オハナ転職の関連記事も参考にしてください。
転職が怖い人におすすめの転職エージェント3選|不安で動けない人こそ相談から始めよう
転職エージェントの特徴や、相談するときの考え方を紹介しています。
よくある質問
Q. 転職活動中に今の会社が良く見えてきたら、活動をやめてもいい?
はい。転職活動を始めたからといって、必ず転職する必要はありません。
ただし、転職を考えた原因が解消されたのか、活動に疲れただけなのかを確認してから判断しましょう。
Q. 転職活動をやめたら、また最初から始めないといけない?
必ずしもそうではありません。
職務経歴書や自己分析の内容は、次の転職活動でも活用できます。ただし、求人情報や採用状況は変わるため、再開時には最新情報を確認する必要があります。
Q. 転職活動をしていることを今の会社に伝えるべき?
必ずしも伝える必要はありません。
在職中に転職活動をする場合は、勤務時間や会社の設備を私的に使わないこと、機密情報を扱わないことなどに注意しましょう。
Q. 転職活動をした結果、今の会社に残る人もいる?
います。
他社の求人と比較することで、今の会社の待遇や働き方の良さに気づく場合があります。
重要なのは、転職したかどうかではなく、自分が納得できる判断をしたかどうかです。
まとめ|転職活動を始めて今の会社が良く見えたなら、判断するチャンス
転職活動を始めたことで、今の会社が良く見えてくることがあります。
それは、今まで気づかなかった会社の魅力を発見したからかもしれません。
あるいは、転職への不安や活動の疲れが影響しているのかもしれません。
どちらの場合でも、焦って結論を出す必要はありません。
今回紹介した7つの判断基準を振り返ってみましょう。
- 転職したいと思った原因は解決したか
- 今の会社の良いところを具体的に説明できるか
- 転職先で改善できることは何か
- 3年後も今の会社で働きたいと思えるか
- 転職しない場合のリスクも考えたか
- 転職活動の疲れだけで判断していないか
- 今の会社に残るなら何を変えるか決められるか
転職活動を始めたからといって、転職することが正解とは限りません。
今の会社に残ることが、自分にとって最善の選択になる場合もあります。
反対に、転職活動を通じて自分の可能性を知り、新しい環境へ進む決断ができることもあります。
大切なのは、転職することではなく、自分が納得できる働き方を選ぶことです。
まだ答えが出ていないなら、まずは今の会社と他社の条件を比較するところから始めてみてください。
そして、自分一人では判断が難しいと感じたら、キャリアの専門家に相談してみるのも一つの方法です。
転職が怖い人におすすめの転職エージェント3選|不安で動けない人こそ相談から始めよう
焦らず、自分のペースで次の一歩を考えていきましょう。