
転職の「棚卸し」って何をする?20代30代が自分の経験・強みを見つける7ステップ
「転職では、まずキャリアの棚卸しをしましょう」
転職について調べていると、こんな言葉をよく見かけます。
でも、
「棚卸しって、結局何を書けばいいの?」
「大した実績がないから書くことがない」
「自分の仕事なんて普通のことばかり」
と思いませんか?
私も「自分の強みを考えてください」と言われるより、
「今まで何をやってきたのか、全部書き出してください」
と言われた方が考えやすいと思います。
実は、転職でいう「棚卸し」は難しい自己分析ではありません。
これまでやってきた仕事を一度バラバラにして、
「何をやったか」
「どう工夫したか」
「何ができるようになったか」
を整理する作業です。
この記事では、特別な実績がないと思っている20代・30代でもできる「仕事の棚卸し」を7ステップで紹介します。
そもそも転職の「棚卸し」とは?
スーパーや工場の棚卸しでは、
「何が、どれだけあるのか」
を確認します。
転職の棚卸しも基本的には同じです。
確認するのは商品ではなく、
自分がこれまで積み上げてきた経験
です。
たとえば営業なら、
「営業を3年間やりました」
だけでは、具体的に何ができるのか分かりません。
そこで仕事を細かく分けます。
- 新規顧客への営業
- 既存顧客への訪問
- 見積作成
- 顧客からの問い合わせ対応
- 納期調整
- 社内との打ち合わせ
- クレーム対応
- 売上管理
- 提案資料作成
こうすると、同じ「営業3年」でも中身が見えてきます。
転職で大切なのは、
肩書きではなく、その仕事を通じて何を経験したか
です。
「そもそも自分に何ができるのか分からない」という段階なら、先に転職したいけど自分に何ができるかわからない人へ|強みの見つけ方を読んでみてください。
今回の記事は、その次のステップです。
なぜ転職前に棚卸しをした方がいいのか?
理由はシンプルです。
棚卸しをしないまま転職活動を始めると、
「自分をうまく説明できない」
からです。
求人を見ても、
「自分にできるかな?」
面接で、
「あなたの強みは?」
と聞かれても、
「コミュニケーション能力です……」
職務経歴書を書こうとしても、
「特に書ける実績がない……」
となってしまいます。
でも本当に何もないのでしょうか?
多くの場合、
何もないのではなく、整理されていないだけ
だと思います。
だから一度、頭の中から仕事を全部出してみます。
STEP1|まず「すごい実績」を探すのをやめる
ここが最初のポイントです。
棚卸しをするとき、
「売上1億円達成!」
「社長賞受賞!」
「大規模プロジェクト成功!」
のような実績を探す必要はありません。
最初はもっと普通のことで構いません。
たとえば、
「毎朝メールを確認する」
でもいい。
「お客様から電話が来たら担当部署に確認する」
でもいい。
「Excelに数字を入力する」
でも構いません。
なぜなら、
普通の仕事の中に、その人の能力が隠れているからです。
自分にとって当たり前になっている仕事ほど、自分では価値に気づきにくいものです。
STEP2|一日の仕事を朝から順番に書く
「自分の経験を書き出してください」
と言われると難しく感じます。
そこでおすすめなのが、
ある一日の仕事を朝から思い出す方法
です。
たとえば営業職なら、
8:30 メール確認
9:00 見積作成
10:00 顧客へ電話
11:00 製造部門と納期確認
13:00 客先訪問
15:00 新規案件の打ち合わせ
16:30 社内へ内容共有
17:00 資料作成
こんな感じです。
ここでは能力を考えなくて大丈夫です。
ただ、
「自分は普段何をしているのか」
を書きます。
できれば10個以上出してみてください。
意外といろいろな仕事をしていることに気づくと思います。
STEP3|それぞれの仕事に「なぜ?」を加える
次に、一つひとつの仕事について、
「何のためにやっているのか?」
を考えます。
たとえば、
「納期確認」
だけなら単なる作業です。
でも、
「なぜ納期確認をするのか?」
と考えると、
「お客様の希望納期に間に合わせるため」
となります。
さらに、
「そのために何をしている?」
と考えると、
「製造部門の予定を確認して調整している」
となります。
すると、
納期確認
↓
顧客要求の把握
↓
社内スケジュール確認
↓
関係部署との調整
↓
顧客への回答
という仕事の流れが見えてきます。
単なる「納期確認」だと思っていた仕事が、
調整力・段取り力・コミュニケーション力
を必要とする仕事だったと分かります。
STEP4|「困ったこと」を思い出す
私はここがかなり重要だと思っています。
順調だった仕事だけではなく、
困った仕事を思い出してください。
たとえば、
- 納期に間に合わなかった
- お客様からクレームが来た
- ミスをした
- 上司から注意された
- 社内で意見が合わなかった
- 新しい仕事で何をすればいいか分からなかった
こういう経験です。
一見すると転職で隠したくなる経験ですよね。
でも、ここに成長の材料があります。
考えるのは、
「そのとき、自分はどうしたか?」
です。
クレームが来た。
↓
まず内容を聞いた。
↓
現場に状況を確認した。
↓
原因を整理した。
↓
お客様へ説明した。
↓
同じ問題が起きないよう社内で共有した。
ここまで分解すると、
単なる「クレームを受けた経験」ではありません。
問題把握・社内調整・説明・再発防止
という経験になります。
失敗そのものより、
失敗したあとに何をしたか。
そこにその人の強みが出ます。
STEP5|人から頼まれることを書く
次に、
「周囲から何を頼まれることが多いか」
を考えます。
たとえば、
「Excelについてよく聞かれる」
「新人への説明を頼まれる」
「難しいお客様への対応を任される」
「資料を作ってほしいと言われる」
「トラブルがあると呼ばれる」
「会議の内容をまとめてほしいと言われる」
などです。
自分では、
「それくらい普通でしょ」
と思うかもしれません。
でも、何度も頼まれているなら、
周囲から『この人ならできる』と思われている可能性があります。
自分の強みは、自分より周囲の人の方が気づいていることがあります。
STEP6|「作業」を「能力」に変換する
ここまで書いたら、仕事を転職市場で伝わる言葉へ変えてみます。
たとえば、
見積作成
だけではなく、
「顧客の要求条件を整理し、原価・納期を確認して見積を作成」
とします。
すると、
- 情報整理
- 数字管理
- 条件確認
- 社内調整
という能力が見えてきます。
ほかにも、
クレーム対応
→ 傾聴・原因整理・関係者調整・説明力
新人教育
→ 指導・マニュアル化・コミュニケーション
検査
→ 品質管理・注意力・異常発見
資料作成
→ 情報整理・文章化・PCスキル
接客
→ ヒアリング・提案・対人対応
在庫管理
→ 数量管理・予測・段取り
というように変換できます。
ここまで来ると、
「自分には何もない」
という状態から、
「意外といろいろやってきたな」
に変わってきます。
STEP7|求人票と自分の経験を照らし合わせる
最後に求人を見ます。
ここで初めて、
「自分の経験が他社で使えるのか」
を確認します。
たとえば求人票に、
「顧客との折衝経験」
と書いてあったとします。
難しく感じるかもしれません。
でも自分の棚卸しを見ると、
「顧客と納期調整をしてきた」
「仕様変更の相談をしてきた」
「クレーム対応をしてきた」
という経験がある。
それなら、
「これって顧客折衝経験になるのでは?」
と気づけます。
求人票の言葉と、自分の会社で使っている言葉は違うことがあります。
だからこそ、
仕事内容ではなく、その仕事で何をしていたのか
まで分解することが重要です。
求人を見るときの具体的なポイントについては、求人票の募集背景はどこを見る?増員・欠員補充からわかる5つのことも参考にしてください。
求人票の「募集背景」を見ると、企業がなぜ人を必要としているのかも見えてきます。
実際に「営業の仕事」を棚卸しするとこうなる
一つ具体例を作ってみます。
仕事内容
顧客から新規案件の相談を受ける。
その後にやっていること
顧客から図面や条件を受け取る。
↓
内容を確認する。
↓
分からないところを質問する。
↓
社内の製造部門へ確認する。
↓
加工できるか確認する。
↓
納期を確認する。
↓
価格を計算する。
↓
見積を提出する。
↓
顧客から質問が来たら再度社内確認する。
これを能力へ変えると、
- ヒアリング力
- 情報整理力
- 質問力
- 社内調整力
- スケジュール管理
- 原価意識
- 提案力
- 顧客対応力
となります。
「見積を作っていました」
だけでは伝わらなかった能力が見えてきます。
これが棚卸しです。
製造職でも同じように考えられる
製造業で、
「機械を動かしていただけだから、転職でアピールできない」
と思っている人もいるかもしれません。
でも本当にそうでしょうか。
たとえば、
機械を操作する。
↓
条件を確認する。
↓
製品をセットする。
↓
加工する。
↓
品質を確認する。
↓
異常があれば止める。
↓
原因を確認する。
↓
必要なら上司へ報告する。
↓
次の製品へ段取り替えする。
これだけでも、
- 設備操作
- 品質管理
- 異常発見
- 安全意識
- 段取り
- 報連相
- 改善活動
などの経験があります。
仕事を細かく分解すると、
「ただやっていた仕事」が「身につけた能力」に変わります。
「数字で語れる実績」がなくても大丈夫
転職について調べると、
「実績は数字で書きましょう」
と言われます。
確かに、
「売上120%達成」
「作業時間20%削減」
のように数字で説明できれば分かりやすいです。
でも、すべての仕事を数字にできるわけではありません。
特に20代で経験が浅かったり、事務・製造・サポート職だったりすると、
「自分個人の売上」
のような数字がないこともあります。
そんなときは、
数字を無理に作らないこと。
代わりに、
「どんな状況で」
「何を考え」
「どう行動し」
「何が変わったか」
を書きます。
たとえば、
「新人に仕事を教えた」
なら、
「新人が迷いやすい作業を整理し、手順を説明して独り立ちまでサポートした」
とできます。
派手ではありません。
でも十分に仕事の経験です。
ドラッカーの考え方|強みは「結果」から見つける
自分の強みを考えるとき、参考になるのがピーター・ドラッカーの考え方です。
ドラッカーは、自分の強みを知る方法として、自分の行動とその結果を振り返る「フィードバック分析」を説きました。
これは仕事の棚卸しにも使えます。
「自分の強みは何だろう?」
と考えるだけではなく、
「どんな仕事をしたとき、結果が出たか」
を振り返ります。
お客様から感謝された。
上司から任されるようになった。
作業が早くなった。
ミスが減った。
後輩が仕事を覚えた。
問題を解決できた。
そうした小さな結果から逆算すると、
自分の得意なことが見えてきます。
棚卸しは「過去を見る作業」だけではない
ここまで読むと、
棚卸し=過去の仕事を振り返ること
と思うかもしれません。
でも本当の目的は、
未来を選びやすくすること
です。
たとえば棚卸しをして、
「人と話す仕事は多かったけれど、実は資料を整理している時間の方が好きだった」
と気づくことがあります。
逆に、
「PC作業より、お客様と話して問題を解決したときの方が楽しかった」
と気づくこともあります。
そうすると、
「次はどんな仕事を選ぶか」
のヒントになります。
自分の適職そのものが分からない場合は、自分に向いている仕事がわからない人へ|適職の見つけ方も参考にしてください。
私自身も「経験はつながっている」と感じる
私はこれまで、学習塾に関わる仕事や営業、製造業に関わる仕事など、異なる環境を経験してきました。
一見すると、バラバラに見える経験です。
でも振り返ってみると、共通しているものがあります。
相手の話を聞く。
分からないことを調べる。
情報を整理する。
人に分かるように説明する。
問題が起きたら関係者へ確認する。
より良いやり方を考える。
職種が変わっても、こうした能力は残っています。
キャリアは、
「○○会社で何年働いた」
だけではありません。
その会社で、
何を経験し、何を身につけたか。
それも自分のキャリアです。
稲盛和夫の考え方から学ぶ|目の前の仕事にも意味がある
仕事の棚卸しをするとき、
「こんな仕事を書いても意味がない」
と思うことがあります。
そんなときに思い出したいのが、稲盛和夫氏の仕事に対する考え方です。
稲盛氏は、目の前の仕事に真剣に取り組むことが、人間としての成長につながるという考えを繰り返し説いています。
転職でも同じだと思います。
華やかな仕事だけがキャリアではありません。
電話を一本かけた。
資料を一つ作った。
現場で一つ確認した。
困っている人を助けた。
ミスを一つ改善した。
毎日の小さな仕事の積み重ねが、
数年後には自分の経験になります。
だから、
「大した仕事をしていない」
と最初から切り捨てないでください。
棚卸しが終わったら職務経歴書へ移す
ここまでできたら、次は書類へ落とし込みます。
棚卸しした内容を全部、職務経歴書に書く必要はありません。
応募する会社に合わせて、
「この会社で活かせそうな経験はどれか」
を選びます。
たとえば営業職へ応募するなら、
顧客対応・提案・調整・数字管理。
製造職なら、
設備・品質・安全・改善。
管理職なら、
教育・業務改善・チーム管理。
というように選びます。
つまり、
棚卸し=材料を集める作業
で、
職務経歴書=その会社に必要な材料を選んで料理する作業
だと考えると分かりやすいと思います。
書類まで進める場合は、サイト内の「書類選考に通る自信がない人へ|職務経歴書の作り方7ステップ」も合わせて読んでみてください。
棚卸しができると面接も楽になる
棚卸しは職務経歴書だけではありません。
面接でも使えます。
面接では、
「これまでどんな仕事をしてきましたか?」
「仕事で工夫したことは?」
「あなたの強みは?」
「失敗した経験は?」
「入社後どのように活躍できますか?」
などを聞かれます。
全部、棚卸しした材料から答えられます。
つまり、
棚卸しを一度しっかりやれば、職務経歴書・自己PR・面接の土台をまとめて作れる
ということです。
自己PRまで進んだら、転職面接の自己PRはこれで通過率が変わる|20代30代が面接官に評価される伝え方完全ガイドへ進んでください。
今日30分でできる「超簡単棚卸し」
ここまで読んで、
「結構大変そう……」
と思った人もいるでしょう。
最初から完璧にやる必要はありません。
紙でもスマホでも構いません。
次の5つだけ書いてみてください。
①今やっている仕事を10個
②人からよく頼まれることを3個
③仕事で困った経験を3個
④その問題をどう解決したか
⑤以前よりできるようになったことを3個
これだけです。
30分あればできます。
そして最後に、
「この経験を必要としている会社はないかな?」
と求人を見てみてください。
今までとは少し違った見え方になると思います。
まとめ|「何もない」のではなく、まだ整理していないだけ
転職を考えると、
「自分には特別なスキルがない」
「人に誇れる実績がない」
「転職先で通用するものがない」
と思ってしまうことがあります。
でも、いきなり自分の強みを考える必要はありません。
まず、
何をしてきたか。
そこから始めればいいのです。
仕事を書き出す。
↓
目的を考える。
↓
困った経験を思い出す。
↓
工夫したことを書く。
↓
人から頼まれることを書く。
↓
能力の言葉へ変える。
↓
求人と照らし合わせる。
この順番で整理すると、
「何もできない」
と思っていた状態から、
「自分はこれをやってきた」
と言えるようになります。
そして、その次に初めて、
「この経験を次の会社でどう活かすか」
を考えればいい。
転職は、自分を実際以上によく見せる競争ではありません。
これまで歩いてきた道を整理して、
自分の経験を必要としてくれる場所を探す作業
でもあります。
今日まず30分だけ、自分が普段やっている仕事を書き出してみてください。
そこに、次のキャリアにつながる材料が眠っているかもしれません。