
「仕事ができる人になりたい」
20代・30代で仕事に悩んでいる人なら、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。
私自身、塗装会社の営業として働きながら、「仕事ができる人って何が違うんだろう?」と考えることがあります。
知識が豊富な人。判断が速い人。仕事をたくさんこなせる人。もちろん、どれも大切です。
しかし最近、工場での打合せをしていて改めて感じたことがあります。
仕事ができる人ほど「分からないこと」をそのままにしないということです。
分からないから確認する。数字に疑問を持つ。現物を見る。条件を整理する。そして、問題が起きる前に一度仕事を止める。
一見すると仕事が遅く見えるかもしれません。しかし長い目で見ると、この「確認する力」が仕事の質を大きく左右します。
工場の打合せで出てきた「70~110μmをどう管理するの?」
今回、仕事で模様のある特殊な塗料について打合せをしていました。お客様から提示されている膜厚の基準があります。
しかし、ここで一つ疑問が出ました。「そもそも、この膜厚をどうやって測っているのだろう?」という問題です。
普通の塗装であれば、膜厚計を当てて測定できます。ところが今回は表面に凹凸のある模様塗料です。測定する場所によって数字が変わる可能性があります。
にもかかわらず、「70~110μmだから、その範囲に入れればいい」とだけ考えて仕事を進めてしまったらどうでしょう。
塗装した後になって、「測定方法が違います」「求めていた模様と違います」となる可能性があります。
だから打合せでは、「70~110μmという数字を、お客様はどう管理しているのか確認しよう」という話になりました。
私はこのやり取りを聞きながら、仕事では、与えられた数字をそのまま受け取るだけでは足りないのだと改めて感じました。
「分からない」と言える人の方が仕事は強い
20代・30代の頃は特に、「こんなことを聞いたら仕事ができないと思われるのでは?」と考えてしまいます。
お客様から質問されたら、すぐ答えたくなる。上司から指示されたら、すぐ動きたくなる。
しかし、分からないのに分かったふりをして進める方が、仕事では危険です。
分からないこと自体は問題ではありません。問題なのは、分からないことに気づかないこと。そして、気づいているのに確認せず進めることです。
これは以前書いた「仕事ができないから転職が怖い人へ」でも書きましたが、「知らない」と「能力がない」は別の話です。
知らなければ確認すればいい。分からなければ質問すればいい。その積み重ねによって、少しずつ仕事はできるようになっていきます。
写真だけでは分からないなら「現物」で確認する
今回の打合せでは、もう一つ印象的な話がありました。模様塗料なので、実際にどんな模様になるのか分かりません。
写真を見せてもらう方法もあります。しかし、「写真だけでは分からない」という話になりました。
そこで出てきたのが、大きめの板を実際に塗装して、その板を分割し、現物を見てもらって判断してもらうという考え方でした。
想像で話さない。資料だけで判断しない。分からなければ現物を見る。
製造業では、現場・現物・現実という「三現主義」の考え方があります。これは製造業だけの話ではありません。
営業でも同じです。お客様が何を求めているのか分からなければ確認する。上司の指示が曖昧なら質問する。資料だけで分からなければ現物を見る。
つまり、「分かったつもり」をなくすことが仕事の精度を上げるのです。
仕事ができない人ほど「早くやらなきゃ」と焦ってしまう
仕事に自信がないと、「早く終わらせなければ」「すぐ回答しなければ」と焦ります。しかし、焦れば焦るほど確認を飛ばしてしまいます。
確認不足 → ミス → やり直し → 怒られる → 自信をなくす → さらに焦る、という悪循環になります。
だから私は、仕事が速い=すぐ作業を始めることではないと思っています。
本当に仕事が速い人は、最初に確認して、やり直しを減らす人なのではないでしょうか。
仕事のミスに悩んでいる人は、20代30代の仕事でミスが多い人の改善策も参考にしてみてください。
もう一つの問題「番号が分からなくなる」
今回の打合せでは、塗装条件以外にも問題が見つかりました。試作品には番号が振られています。
当然、「何番の製品を、どんな条件で加工して、どんな結果になったのか」を追跡できなければいけません。
ところが現物を確認すると、「この番号はどの製品なのか?」「番号と製品をどう紐付けるのか?」という問題が出てきました。
そこで、クリップにマスキングテープを貼り、そこへ番号を書くといった方法まで話し合いました。
これは小さな話に見えます。しかし品質管理では非常に重要です。
結果だけ残っていても、その結果がどの製品のものか分からなければデータとして使えないからです。
いつ、誰が、何を、どの条件で、どうやったのか。後から第三者が確認できる状態にしておく。これが「仕事を仕組みにする」ということなのだと思います。
現物を見たら「すでに曲がっている」ことに気づいた
さらに今回、入荷した細長い製品を確認していると、すでに曲がっている製品が見つかりました。
非常に細長く、自重でも変形する可能性がある製品です。
もしここで確認せず、そのまま加工していたら、出荷後に曲がりが見つかったとき、「入荷時から曲がっていたのか」「自社の工程で曲げてしまったのか」分からなくなります。
だから、入荷時点で確認する。写真を撮る。お客様へ伝える。取り扱い方法を決める。ここまでやって初めて、安心して次の工程へ進めます。
私はこれを見て、問題を解決する能力以上に、問題を早く発見する能力が重要なのではないかと思いました。
「異常がある状態で、そのまま仕事を流さない」
工場の仕事では、異常がある状態でそのまま次工程へ流さず、一度止めて原因を確認することが重要です。
これは普通の会社員にも応用できる考え方だと思います。
「これで合っているのかな?」と思ったら止まる。「指示の意味が分からない」と思ったら聞く。「数字の根拠が分からない」と思ったら確認する。
仕事ができる人とは、何でも一人で判断できる人ではありません。止まるべきところで止まれる人です。
20代30代が今日からできる「確認力」の鍛え方
仕事を始める前に、次の5つを確認するだけでも変わります。
- 目的は何か — なぜこの仕事をするのか。
- 完成形は何か — どんな状態になればOKなのか。
- 数字の根拠は何か — なぜその数量、その納期、その基準なのか。
- 分からないことは何か — 自分が理解できていない部分を明確にする。
- 問題が起きたとき追跡できるか — 記録、番号、写真などが残っているか。
特に大切なのは、「分からないことは何か」を自分で認識することです。
質問することが苦手な人は、20代30代の仕事が覚えられない人の対処法も読んでみてください。
確認する人は「仕事が遅い人」ではない
若い頃は、質問ばかりすると「そんなことも分からないの?」と思われそうで怖いものです。
しかし経験を積むほど、私は逆だと感じるようになりました。仕事で本当に怖いのは、分からないのに確認しないことです。
もちろん何でも聞けばいいわけではありません。まず自分で考える。資料を見る。現物を見る。それでも分からない部分を整理して質問する。
例えば「分かりません」だけではなく、「私は○○という理解ですが、△△についてだけ確認させてください」と聞く。これだけでも質問の質は大きく変わります。
こうした内容を簡潔に相手へ伝える力も重要です。うまく説明できないことに悩んでいる人は、20代30代が知らないと損する「伝わる力」も参考になると思います。
「仕事ができない」と悩んでいるあなたへ
20代・30代で仕事に悩んでいると、「あの人はすぐ判断できるのに、自分は分からない」「自分には能力がないのではないか」と思ってしまうことがあります。
でも、経験のある人が判断できるのは、過去に何度も、分からないことに出会い、質問し、失敗し、確認し、一つずつ知識を増やしてきたからです。
最初から全部知っていたわけではありません。
だから、「分からない」は成長のスタート地点です。
調べる。聞く。現物を見る。記録する。そして次に同じ状況になったときには、自分で判断できるようにする。その積み重ねが「経験」になります。
転職しても必要なのは「何でも知っている力」ではない
転職すると会社も変わります。商品も変わります。仕事の進め方も変わります。人間関係も変わります。
つまり、これまでの知識だけでは対応できない場面が必ず出てきます。
そこで重要になるのが、分からないことを自分で発見して、確認し、理解していく力です。
だから、「今の会社で仕事ができないから、転職しても通用しない」と決めつける必要はありません。
むしろ今の仕事で、「なぜ?」「本当にこれでいい?」「何を確認すればいい?」と考える習慣を身につけておけば、その力は会社が変わっても使えます。
まとめ|仕事ができる人は「分からない」を成長に変える
今回の工場打合せでは、膜厚をどう測定するのか。模様をどう評価するのか。試作品と番号をどう紐付けるのか。入荷した製品は曲がっていないか。マスキング方法は正しいのか。次々と「分からないこと」が出てきました。
しかし私は、それでいいのだと思います。
仕事とは、最初から答えを知っていることではなく、分からないことを一つずつ明確にしていくことだからです。
分からないことを見つける。確認する。現物を見る。記録する。改善する。
それを繰り返していけば、昨日まで分からなかったことが、今日は分かる。今日できなかったことが、明日はできる。
もし今、「自分は仕事ができない」「転職しても通用しないかもしれない」と悩んでいるなら、何でも知っている人を目指さなくてもいい。
まずは今日一つ、「分からないことを放置しない」ことから始めてみてください。
その小さな習慣が、数年後のあなたの仕事力を大きく変えているかもしれません。