実体験と理想

仕事ができる人の考え方|HUNTER×HUNTERから学ぶ仮説検証の仕事術

仕事ができる人は「正解」を知っている人ではない|HUNTER×HUNTERから学ぶ仮説検証の仕事術

「試験をやりました」

「結果が出ました」

私は営業会議で、そう報告しました。

自分としては、きちんと仕事をしたつもりでした。

お客様から依頼された試験を行った。

条件を変えて比較した。

数字もまとめた。

資料も作った。

だから当然、

「ここまでやれば十分だろう」

と思っていました。

ところが社長から返ってきた言葉は、私が想像していたものとは違いました。

「それで、何が分かったの?」

一瞬、言葉に詰まりました。

結果なら説明できます。

でも、

「その結果が何を意味するのか」

までは考え切れていなかったのです。

この経験を振り返ったとき、私はある漫画を思い出しました。

『HUNTER×HUNTER』です。

念能力の世界では、

能力を知っているだけでは強くなれません。

実際に使う。

相手の反応を見る。

仮説を立てる。

試す。

違ったら修正する。

そして、また試す。

この繰り返しによって、能力の使い方そのものが研ぎ澄まされていきます。

これって、実は仕事も同じなんじゃないか。

そんなことを考えるようになりました。


営業会議で突きつけられた「それで何が分かったの?」

その日、私はある製品の試験結果を報告していました。

製品に付着している成分を除去するため、

薬液の状態。

濃度。

処理時間。

それぞれ条件を変えて試験しました。

ある条件では大きく数値が下がった。

別の条件では、思ったほど下がらなかった。

中には、逆に数値が増えているように見えるものまでありました。

私はそのデータを資料にまとめて説明します。

すると社長から質問されました。

「結果が出ました、はいいんだけど、この結果から何が分かるの?」

さらに、

「なんでここは増えているの?」

と聞かれます。

私は答えられませんでした。

「すみません。分かりません」

すると、

「そういう『なぜ?』を全部書き出してほしい」

という指摘を受けました。

つまり求められていたのは、

実験結果の読み上げではありません。

結果を材料にして、

「何が起きているのか」

「次に何を確認するべきなのか」

を考えることだったのです。


「データを集める人」と「問題を解く人」は違う

ここで私は、自分の仕事のやり方に一つの問題があることに気づきました。

私は、

情報を集めること

に一生懸命になっていたのです。

試験する。

数字を出す。

Excelにまとめる。

資料にする。

報告する。

ここまでやると、ものすごく仕事をした気になります。

でも、データは答えではありません。

データは、

答えを考えるための材料

です。

たとえば、

A条件では0%近くまで下がった。

B条件では3%残った。

そこで、

「Aは0%、Bは3%でした」

と報告するだけなら、データの読み上げです。

一歩進むなら、

「AとBの違いは何だろう?」

と考える。

さらに、

「処理時間が影響しているのではないか」

と仮説を立てる。

そして、

「ならば次は時間だけを変えて試験してみよう」

と考える。

ここまで来て初めて、

仕事が前に進み始めます。


HUNTER×HUNTERの面白さは「能力」だけではない

『HUNTER×HUNTER』には、さまざまな念能力が登場します。

だから、

「誰の能力が一番強い?」

という話になりがちです。

でも、この作品の面白さは単純な能力の強弱だけではないと私は思っています。

強力な能力を持っていても、

条件を理解していなければ使いこなせない。

相手の能力を知らなければ、迂闊に動けない。

自分の仮説が間違っていれば、一気に不利になる。

だから登場人物たちは、

「相手の能力は何だ?」

「発動条件は?」

「今の行動にはどんな意味がある?」

と考え続けます。

そして、

仮説を立てながら動く。

今回参考にした420話までの考察資料でも、能力を実践しながら仮説を検証していく展開が取り上げられています。

ここが仕事とよく似ています。


仕事では最初から「正解」が分からない

営業の仕事をしていると、

正解が分からないことだらけです。

この価格なら受注できるのか。

この塗装仕様なら要求性能を満たせるのか。

この前処理なら密着するのか。

この条件なら不良が出ないのか。

お客様が本当に求めているものは何なのか。

誰も答えを教えてくれません。

だから、

「全部分かってから行動しよう」

と思っていたら仕事が進まない。

そこで必要になるのが、

仮説です。


仮説は「当てること」が目的ではない

以前の私は、

仮説を立てることに少し抵抗がありました。

間違っていたらどうしよう。

見当違いだったら恥ずかしい。

だから、

「確認してから答えます」

「お客様に聞いてみます」

「メーカーに確認します」

となりやすかった。

もちろん確認は必要です。

でも、それだけでは自分の思考がありません。

たとえば今回の試験なら、

「処理時間を長くすると除去率が上がるのではないか」

「初期の付着量が多すぎるものは、現工程では除去し切れないのではないか」

「薬液濃度だけではなく、素材側のばらつきを管理する必要があるのではないか」

と、まず自分なりの仮説を持つ。

そしてデータを見る。

違ったら、

「あ、違った」

でいい。

重要なのは、

仮説を当てることではなく、仮説を更新すること。

なのだと思います。


「31%の異常値」をどう見るか

今回の会議でも象徴的なデータがありました。

他のサンプルより、かなり高い数値を示しているものがありました。

私は、

「これは規格外の異常値です」

と考えていました。

でも、本当にそれだけでいいのでしょうか。

むしろ仕事では、

異常値にこそヒントが隠れている

ことがあります。

なぜ、この製品だけ高いのか。

製造条件が違ったのか。

測定誤差なのか。

そもそも素材側のばらつきなのか。

もし30%を超えるものが量産でも普通に入ってくるなら、

自社の処理条件だけを改善しても限界があります。

すると問題は、

「どうやって全部落とすか」

ではなく、

「塗装前の状態をどこまで管理してもらう必要があるのか」

に変わります。

会議でも、初期状態のばらつきが大きければ自社だけでは100%の品質保証が難しく、顧客側と条件を考える必要があるという方向へ議論が進みました。

ここで初めて、

単なる試験結果が、

顧客への提案

に変わります。


「言われた実験をする人」から「次の実験を考える人」へ

ここに大きな境界線があります。

仕事を始めた頃は、

「これを試験してください」

と言われたら試験する。

「これを調べてください」

と言われたら調べる。

それで十分です。

でも経験を積んでいくと、求められるものが変わります。

試験結果を見て、

「だったら次はこれを試した方がいい」

と考える側にならなければいけない。

私は営業会議で、

その境界線に立っていたのだと思います。


もし仕事をHUNTER×HUNTERの「念能力修行」だと思ったら

ここで少し発想を変えてみます。

毎日の仕事を、

念能力の修行だと思ったらどうでしょう。

新しい案件が来る。

未知の敵です。

まず情報を集める。

製品形状。

材質。

要求品質。

価格。

数量。

納期。

でも情報は完全には集まりません。

だから仮説を立てる。

「この素材なら、この前処理が必要では?」

「この形状なら、この部分に液が残るのでは?」

「この数量なら、この治具では採算が合わないのでは?」

そして試す。

結果を見る。

仮説を更新する。

また試す。

すると一案件終わるごとに、

自分の中に経験値が残ります。


同じ失敗をする人と、成長する人の違い

仕事で失敗しない人はいません。

でも、

同じような失敗を何度もする人と、

失敗するたびに強くなる人がいます。

違いは何でしょうか。

私は、

失敗した後に「仮説を更新したかどうか」

だと思います。

たとえば上司から、

「お客様はなぜこの条件を要求しているの?」

と聞かれて答えられなかった。

そこで、

「怒られた……」

だけで終われば、経験値はほとんど増えません。

でも、

「自分は仕様ばかり確認して、目的を聞いていなかった」

と気づけば、

次の案件から質問が変わります。

「この要求値は、どのような評価を想定されていますか?」

「この条件を設定されている理由を教えていただけますか?」

すると情報量が増える。

仮説の精度も上がる。

仕事の質が変わります。


「15年耐久です」をそのまま受け取らない

別の案件では、

「15年程度の耐久性」

という要求がありました。

以前なら、

「15年耐久ですね。分かりました」

と受け取っていたかもしれません。

でも会議では、

「15年で何を維持できればいいの?」

という問いが出ました。

これも非常に重要です。

サビが出なければいいのか。

剥離しなければいいのか。

色差なのか。

光沢保持率なのか。

どこに設置するのか。

海岸沿いなのか。

内陸なのか。

同じ「15年」でも意味は全く違います。

会議でもまさに、「何をもって15年なのか」を確認する必要性が指摘されています。

つまり、

要求を聞くことと、要求を理解することは違う。

これも私にとって大きな学びでした。


20代・30代で「仕事に向いてない」と感じている人へ

ここからは、転職を考えている人に伝えたいことです。

上司から質問されても答えられない。

会議で指摘される。

仕事の抜け漏れがある。

周りの人の方が仕事ができるように見える。

そんな状態が続くと、

「自分にはこの仕事は向いていない」

と思ってしまいます。

でも、少し考えてみてください。

あなたは、

能力がないのでしょうか。

それとも、

まだ自分の能力の使い方を知らないだけなのでしょうか。

これは全く違います。

上司から質問されても答えられない。
会議で指摘される。
仕事の抜け漏れがある。

そんな経験が続けば、自信を失うのも無理はありません。

**「転職したい。でも自分に自信がない」**というところまで気持ちが落ちているなら、まずは転職する・しないを決める前に、自信を失っている原因を整理してみてください。
→ 「転職したいけど自信がない人へ|怖くて動けないときにやるべき7つのこと」


最初から念能力を使いこなせる人はいない

HUNTER×HUNTERの世界でも、

能力を覚えただけで完成ではありません。

実践する。

失敗する。

相手を見る。

自分の弱点を知る。

工夫する。

そして能力の使い方を磨いていく。

仕事も同じです。

営業を3年やった。

Excelを使える。

見積書を作れる。

製造工程を知っている。

それだけではまだ、

「能力を持っている」

段階なのかもしれません。

その能力を、

どの場面で、

どう組み合わせ、

どんな問題を解くために使うのか。

そこまで考えられるようになったとき、

仕事は急に面白くなってきます。


そこで私は「会議で怒られない」を目標にするのをやめた

以前なら、

営業会議の前になると、

「何を聞かれるだろう」

と考えていました。

質問されたくない。

答えられないのが怖い。

だから資料をたくさん用意する。

でも、それでは本質的には変わりません。

そこで考え方を変えました。

「何を聞かれるか」ではなく、「自分だったら何を疑うか」。

案件を見る。

そして会議前に、自分へ問いかけます。

「この結果から何が分かる?」

「おかしな数字はない?」

「なぜ?」

「お客様の本当の目的は?」

「この条件で本当にいい?」

「もっと安くできない?」

「量産になったら何が問題になる?」

「次に何を試す?」

すると会議の意味が変わってきます。

実は以前の私は、「また社長に指摘された」と落ち込むこともありました。

でも、指摘された事実と「自分には能力がない」という自己評価は別物です。

この考え方については、中村天風の思想と自分自身の営業会議での経験を重ねて、別の記事でも詳しく書きました。
→ 「仕事で怒られて『向いてない』と思ったあなたへ|中村天風に学ぶ、仕事ができる人に変わる考え方」


半年後、同じ営業会議で

半年後。

また営業会議が始まります。

私は試験結果を説明します。

「A条件では1%以下まで低下しました」

社長が資料を見る。

以前ならここで、

「それで何が分かったの?」

と聞かれていました。

でも、その日は違います。

私はそのまま続けます。

「ただし初期値が高いサンプルでは落とし切れていません」

「そのため、処理条件だけの問題ではなく、入荷時の付着量にも管理値が必要ではないかという仮説を立てています」

「次回は初期値を分類して、同一条件で除去率との相関を確認します」

「その結果をもとに、お客様には入荷条件と当社処理条件をセットで提案したいと考えています」

少し間が空きます。

社長が言います。

「だったら、それやってみよう」

会議は次の案件へ進みます。

私は心の中で、

少しだけニヤッとします。

半年前の自分だったら、

ここまで考えていなかった。


仕事ができる人とは「答えを知っている人」ではない

私は以前、

仕事ができる人とは、

知識が豊富で、

質問されたら何でも答えられて、

失敗しない人だと思っていました。

でも最近は少し違います。

本当に仕事ができる人は、

分からないことに遭遇したとき、

「たぶんこうじゃないか?」

と考えられる人なのだと思います。

そして、

試してみる。

違ったら、

「違ったな」

と修正する。

また試す。

つまり、

正解をたくさん持っている人ではなく、正解へ近づく方法を持っている人。

これなら、今の自分にも目指せます。

仮説を立てられるようになったら、次に必要になるのが「そもそも何を解くべきなのか」を見極める力です。仕事が多すぎて毎日追われている人は、工場長の実体験をもとに「本当に解くべき問題」を考えたこちらの記事も参考にしてみてください。
→ 「仕事が多すぎて終わらない人へ|イシュー思考で『本当にやるべき仕事』を見つける方法」


転職しても持っていける「最強の能力」

会社を辞めたら、

今の肩書はなくなります。

会社の商品知識も、そのまま使えるとは限りません。

社内ルールも変わります。

取引先も変わります。

でも、

仮説を立てる力。

データから違和感を見つける力。

「なぜ?」と考える力。

目的を確認する力。

試して、失敗して、修正する力。

これは転職しても持っていけます。

業界が変わっても使えます。

職種が変わっても使えます。

言ってみれば、

自分自身に身についた念能力

みたいなものです。


「仕事ができない自分」は、まだ途中なのかもしれない

もし今、

仕事で失敗しているなら。

上司から指摘されているなら。

会議で答えられなくて悔しい思いをしているなら。

すぐに、

「自分には能力がない」

と決めないでください。

今日の失敗から一つだけ仮説を立ててみる。

「なぜ失敗した?」

「次は何を変える?」

そして明日、試してみる。

違ったら、また考える。

それでいい。


最後に――人生にも「攻略本」はない

HUNTER×HUNTERの戦いが面白いのは、

最初から答えが分からないからです。

相手の能力も、

条件も、

狙いも、

すべてが分かった状態で戦うわけではありません。

仕事も人生も同じです。

この会社に残った方がいいのか。

転職した方がいいのか。

営業を続けるべきなのか。

別の仕事へ行くべきなのか。

最初から答えを知っている人はいません。

だから、

仮説を立てる。

小さく試す。

結果を見る。

そして修正する。

転職だって同じです。

いきなり会社を辞めなくてもいい。

求人を見る。

自分の市場価値を調べる。

資格を勉強してみる。

興味のある業界の人に話を聞く。

副業を始めてみる。

それも全部、

人生の仮説検証

です。

正解を知ってから動くのではありません。

動きながら、正解に近づいていく。

仕事ができる人も、

自分らしいキャリアを見つける人も、

きっと同じなのだと思います。

「分からない」で止まる人から、
「だったら試してみよう」と動ける人へ。

その瞬間から、

仕事もキャリアも、

少しずつ自分で攻略できるものに変わっていきます。

-実体験と理想

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