
はじめに
「転職したい。でも、次の会社が今より悪かったらどうしよう……」
転職を考え始めたとき、こんな不安を感じる人は少なくありません。
今の会社には不満がある。
給料が低い。
人間関係がしんどい。
仕事にやりがいを感じない。
残業が多い。
将来が見えない。
だから転職したい。
それなのに、いざ求人を見たり転職活動を始めようとしたりすると、
「今より人間関係が悪かったら?」
「もっと残業が多かったら?」
「転職して給料が下がったら?」
「ブラック企業だったら?」
「転職しなければよかった、と後悔したら?」
そんな不安が次々に出てきます。
特に20代後半から30代になると、転職を「失敗できない大きな決断」のように感じることもあるでしょう。
ですが、ここで一つ覚えておいてほしいことがあります。
転職で大切なのは、不安をゼロにすることではありません。
転職先が100%良い会社だと確認してから転職することも、残念ながらできません。
大切なのは、
「自分は何を基準に転職するのか」
を決めることです。
今回は、
「転職先が今より悪かったらどうしよう」
と不安になっている20代・30代の人に向けて、転職するかどうかを考えるための7つの判断基準を紹介します。
転職することだけが正解ではありません。
今の会社に残ることも正解になる場合があります。
だからこそ、「怖いから残る」「嫌だから辞める」という感情だけではなく、自分なりの判断基準を持って考えていきましょう。
「転職先が今より悪かったら」と考えるのは自然なこと
まず知っておきたいのは、
転職が怖いと感じること自体は、おかしなことではない
ということです。
なぜなら、今の会社については良いところも悪いところも知っているからです。
嫌いな上司がいる。
給料はこのくらい。
残業は月にこのくらい。
仕事は大変だけど慣れている。
会社の将来性は微妙だけど、とりあえず毎月給料は振り込まれる。
つまり今の会社には不満があったとしても、ある程度「先が読める」のです。
一方、転職先は違います。
求人票やホームページ、面接だけでは会社のすべては分かりません。
どんな上司なのか。
職場の雰囲気はどうなのか。
実際の残業時間はどのくらいなのか。
困ったときに助けてもらえるのか。
評価制度は本当に機能しているのか。
入社してみなければ分からない部分もあります。
だから、
「今より悪くなったらどうしよう」
と考えてしまうのです。
これは転職に真剣だからこそ生まれる不安でもあります。
問題なのは、不安を感じることではありません。
不安だけを理由に、自分の可能性をすべて閉じてしまうことです。
転職すれば今より良くなる保証はない
最初に少し厳しいことも書いておきます。
転職すれば、必ず今より幸せになれるわけではありません。
転職先の人間関係が合わないこともあります。
思っていた仕事内容と違う場合もあります。
「残業はそれほどありません」と聞いていたのに、実際には忙しい時期にかなり残業する会社だった、ということもあるでしょう。
期待していたほど年収が上がらないこともあります。
つまり、
転職にはリスクがあります。
これは事実です。
だからこそ、
「絶対に失敗しない会社を探そう」
と思う人もいるでしょう。
ところが、この考え方には一つ大きな問題があります。
絶対に失敗しない会社など、事前には分からないのです。
口コミを100件読んでも分かりません。
企業研究を徹底しても分かりません。
面接でたくさん質問しても、分からないことは残ります。
そもそも同じ会社でも、
「最高の会社です」
という人もいれば、
「自分には合わなかった」
という人もいます。
仕事には、人との相性や価値観も関係するからです。
だから転職では、
「失敗する可能性をゼロにする」ことを目指すのではなく、「失敗する可能性をできるだけ小さくする」
と考えたほうが現実的です。
でも「今の会社に残れば安全」でもない
ここが今回の記事で最も考えてほしいところです。
転職を考えるとき、多くの人は、
転職するリスク
ばかり考えます。
「給料が下がったらどうしよう」
「人間関係が悪かったらどうしよう」
「仕事についていけなかったらどうしよう」
もちろん考える必要があります。
ですが、もう一つあります。
それが、
転職しないリスクです。
たとえば、今の会社にあと3年間残ったとします。
給料は上がりそうでしょうか。
新しいスキルは身につきそうでしょうか。
市場価値は上がりそうでしょうか。
やりたい仕事ができそうでしょうか。
人間関係は改善しそうでしょうか。
今より仕事を好きになれそうでしょうか。
もし、
「たぶん3年後も同じことで悩んでいると思う」
と感じるのであれば、それも一つのリスクです。
転職には「環境が変わるリスク」があります。
しかし、今の会社に残ることには、
「環境が変わらないリスク」
があります。
どちらにもリスクがあるのです。
だから、
「転職は怖いから今の会社に残る」
だけでは、本当の意味で比較したことにはなりません。
【あわせて読みたい】
「転職した場合のリスク」ばかり考えてしまう人は、一度「転職しなかった場合のリスク」についても考えてみてください。
→ 転職しないリスクとは?「今の会社に残れば安心」とは限らない理由
比べるべきなのは「今の会社」と「理想の会社」ではない
転職で悩んでいると、無意識にこんな比較をしてしまうことがあります。
今の会社には、
「人間関係は悪いけど、仕事には慣れている」
「給料は低いけど、家から近い」
「仕事はつまらないけど、ある程度自由がある」
など、良いところもあります。
それに対して転職先を見ると、
「本当に人間関係は大丈夫かな」
「この会社、将来大丈夫かな」
「仕事についていけるかな」
と不安になります。
当然です。
今の会社については何年もかけて情報を集めています。
転職先について知っているのは、求人票や面接で得た情報くらいです。
情報量がまったく違います。
そこで転職先に、
「給料も上がって」
「残業も減って」
「人間関係も良くて」
「仕事内容も面白くて」
「会社も安定していて」
「福利厚生も充実していて」
「上司も優しい」
という100点を求めてしまいます。
そんな会社を探していたら、なかなか転職できません。
重要なのは、
「何を改善できたら、自分にとって転職成功なのか」
を決めることです。
転職するか迷ったときの7つの判断基準
では、
「転職先が今より悪かったらどうしよう」
と悩んだとき、何を基準に考えればいいのでしょうか。
ここから7つ紹介します。
① 今の不満は転職しなければ解決できないか
まず考えたいのが、
今抱えている不満は、本当に転職しなければ解決できないのか
ということです。
たとえば、
「仕事内容が合わない」
のであれば、部署異動で解決する可能性があります。
「給料が低い」
のであれば、昇進や資格取得によって改善できるかもしれません。
「上司と合わない」
のであれば、人事異動で状況が変わる可能性もあります。
逆に、
会社そのものの文化が合わない。
業界自体に将来性を感じない。
何年働いても給与体系的に年収が上がらない。
やりたい仕事が会社内に存在しない。
こうした問題は、自分一人では変えにくいでしょう。
「会社の中で解決できる問題なのか、会社を変えなければ解決できない問題なのか」
を切り分けてみてください。
② 3年後も今の会社にいたいと思えるか
これはぜひ考えてほしい質問です。
「3年後も今の会社で働いている自分」を想像してみてください。
その姿を想像したとき、
「悪くないな」
と思えるでしょうか。
それとも、
「それは嫌だな……」
と思うでしょうか。
転職するかどうかを「今日の不満」だけで考えると、判断を間違えることがあります。
仕事で嫌なことがあった翌日は、誰だって辞めたくなるからです。
だから少し視点を遠くします。
今と同じ仕事。
今と同じような給料。
今と同じ働き方。
それを3年続けた自分を想像する。
もし、
「このまま3年過ぎるほうが怖い」
と感じるのであれば、その感覚は無視しないほうがいいでしょう。
③ 給料以外に何を変えたいのか
転職を考えると、どうしても年収に目が向きます。
もちろん給料は大切です。
しかし、年収だけで会社を選ぶと、転職後に別の不満が出てくることがあります。
たとえば年収が50万円上がっても、
毎日帰宅が22時になったらどうでしょう。
年収が上がっても、
仕事内容がまったく合わなかったらどうでしょう。
逆に年収がほとんど変わらなくても、
残業が大幅に減る。
休日が増える。
やりたかった仕事ができる。
将来につながる経験が積める。
そうなれば、その転職を「成功だった」と感じる人もいます。
だから、
自分は転職によって何を変えたいのか
を言葉にしてみてください。
④ 次の会社で「絶対に譲れない条件」を決める
100点の会社を探す必要はありません。
その代わり、
絶対に譲れない条件を決めます。
たとえば、
「年収400万円以上」
「年間休日120日以上」
「転勤なし」
「残業月20時間以内」
「営業職からIT職に移りたい」
「土日休み」
などです。
3つ程度に絞ると判断しやすくなります。
反対に、
「できれば欲しい条件」
も分けておきましょう。
絶対条件と希望条件を全部一緒にすると、求人がほとんどなくなってしまいます。
転職では、
自分にとって重要なものを守り、それほど重要ではないものは多少妥協する
という考え方も必要です。
⑤ 「嫌だから辞める」だけになっていないか
今の会社が嫌で転職すること自体は、悪いことではありません。
人間関係がつらい。
評価されない。
仕事が合わない。
そうした理由も立派な転職理由です。
ただし、
「今の会社から離れられればどこでもいい」
となってしまうのは危険です。
今の会社への不満が強すぎると、転職先を見る基準が甘くなるからです。
「今よりマシそう」
だけで会社を決めてしまう。
そして入社後、
「こんなはずじゃなかった」
となってしまうことがあります。
だからこそ、
「今の会社を辞めたい理由」
だけではなく、
「次の会社ではどう働きたいのか」
まで考えておきましょう。
⑥ 転職先について十分に調べたか
転職には分からないことがあります。
しかし、分からないことを減らすことはできます。
求人票だけで会社を判断せず、
仕事内容。
給与体系。
平均残業時間。
休日。
評価制度。
配属予定部署。
転勤の可能性。
入社後の教育。
会社の業績。
口コミ。
面接官の対応。
こうした情報をできるだけ集めます。
面接も「自分が評価される場所」とだけ考える必要はありません。
自分が会社を確認する場所でもあります。
気になることがあれば質問して構いません。
むしろ入社後に後悔するくらいなら、事前に確認したほうがいいでしょう。
【あわせて読みたい】
「転職してから後悔したくない」という人は、転職で後悔しやすいパターンを先に知っておくと判断しやすくなります。
→ 転職して後悔する人の特徴|失敗を防ぐために確認しておきたいこと
⑦ 転職しなかった場合に後悔しないか
最後は少し違う方向から考えます。
「転職したら後悔するかもしれない」
ではなく、
「転職しなかったら後悔しないだろうか?」
と考えてみてください。
たとえば3年後。
「あのとき転職活動くらいしておけばよかった」
と思っている自分はいないでしょうか。
もちろん、転職しない選択もあります。
調べた結果、
「今の会社は意外と条件が良かった」
と気づくこともあります。
それなら残ればいいのです。
問題なのは、
怖いという理由だけで何も調べず、何年も同じ場所で悩み続けることです。
転職先が悪い会社かどうかは入社前にもある程度確認できる
「入社してみないと分からない」
これは確かにその通りです。
しかし、
だからといって完全なギャンブルではありません。
企業研究をする。
求人票を細かく見る。
口コミを調べる。
面接で質問する。
会社の業績を確認する。
転職エージェントに聞く。
可能なら職場見学をする。
こうした行動によって、判断材料を増やすことができます。
特に面接では、
「残業はありますか?」
だけではなく、
「配属予定部署では、繁忙期に月どの程度の残業が発生しますか?」
など、具体的に質問すると実態が見えやすくなります。
人間関係についても、
「職場の雰囲気は良いですか?」
ではなく、
「配属予定のチームは何人で、年齢構成はどのようになっていますか?」
「中途入社した人はどのように仕事を覚えていきますか?」
と聞いたほうが具体的です。
100%見抜くことはできなくても、
情報を集めるほど「運任せの転職」から遠ざかることはできます。
内定が出ても「何となく不安」なら立ち止まっていい
転職活動をして内定が出ると、
「せっかく内定をもらったんだから行かなきゃ」
と思ってしまうことがあります。
でも、
内定が出た=必ず転職しなければならない
ではありません。
条件を確認して、
「思っていた会社と少し違うな」
と思ったなら、もう一度考えて構いません。
特に、
仕事内容。
年収。
勤務地。
休日。
残業。
転勤。
福利厚生。
入社日。
など、働き方に大きく影響する条件は確認しましょう。
そしてもう一度、
「この会社に転職することで、自分が変えたかったことは改善できるのか?」
と問いかけてみます。
答えがYESなら、前向きに検討できます。
反対に、
「今の会社を辞められるなら何でもいい」
となっているなら、一度考え直してもいいでしょう。
それでも怖いなら「転職活動だけ」始めればいい
ここまで読んでも、
「やっぱり転職するのは怖い」
と思っている人もいるでしょう。
そんな人に伝えたいことがあります。
今すぐ転職する必要はありません。
転職するかどうかを決めてから転職活動を始める必要もありません。
まず求人を見る。
興味のある業界を調べる。
自分の年収相場を調べる。
職務経歴書を書いてみる。
転職サイトに登録してみる。
気になる企業に応募してみる。
面接を受けてみる。
そして内定が出た段階で、
「今の会社と、この会社ならどちらを選ぶか」
を考えればいいのです。
転職活動を始めたからといって、会社を辞める必要はありません。
面接を受けたからといって、入社する必要もありません。
内定をもらったとしても、条件が合わなければ転職しないという選択もあります。
つまり、
転職活動は「会社を辞めるための活動」ではなく、「自分にはどんな選択肢があるのかを確認する活動」でもあるのです。
そう考えると、少しハードルが下がりませんか。
【あわせて読みたい】
「転職したい。でも怖くて何もできない」という状態なら、まずはこちらの記事から読んでみてください。
→ 転職が怖くて動けない人へ|何も決めずに始めてもいい理由
「転職する・しない」の二択にしなくていい
転職に悩むと、
「転職する」
または、
「今の会社に残る」
の二択で考えてしまいます。
しかし、本当はその間にたくさんの選択肢があります。
たとえば、
今の会社で働きながら転職活動をする。
これも立派な選択です。
転職サイトを見るだけでもいい。
求人を保存するだけでもいい。
職務経歴書を作るだけでもいい。
一社だけ応募してみてもいい。
転職エージェントと話して、自分の市場価値を聞くだけでもいい。
そして、
「思ったより良い求人がないな」
と思ったら、今の会社に残ればいいのです。
逆に、
「今より条件の良い会社って、意外とあるんだ」
と気づくかもしれません。
選択肢を知ってから決めても遅くありません。
「今の会社に残る」と決めても、それは失敗ではない
転職サイトやSNSを見ていると、
「嫌なら転職すればいい」
「会社にしがみつく時代ではない」
といった言葉を目にすることがあります。
でも、転職だけが正解ではありません。
いろいろ調べた結果、
「今の会社に残ろう」
という結論になることもあります。
それでいいのです。
大切なのは、
何となく怖いから残るのか、比較したうえで残るのか
という違いです。
転職活動をして他社を見たからこそ、
「今の会社って給料は低いと思っていたけど、休日はかなり多いんだな」
「人間関係については恵まれているのかもしれない」
「今の経験をもう2年積んでから転職したほうが選択肢が広がりそうだ」
と気づくこともあります。
それなら、
「今は転職しない」
という立派な判断ができます。
何も調べずに残ることと、他の選択肢を知ったうえで残ることは大きく違います。
転職で大切なのは「絶対に失敗しないこと」ではない
転職を人生の一大決断だと思えば思うほど、
「絶対に失敗したくない」
という気持ちが強くなります。
でも人生には、完全な正解が分からないまま決めなければならないことがたくさんあります。
転職もその一つです。
だから、
「絶対に失敗しない会社を探す」
のではなく、
「自分が納得して選べる状態を作る」
ことを目指してみてください。
そのために必要なのが、
「自分は何を変えたいのか」
を明確にすることです。
給料を上げたい。
休日を増やしたい。
残業を減らしたい。
もっと成長できる環境に行きたい。
違う仕事に挑戦したい。
正当に評価される会社で働きたい。
家族との時間を増やしたい。
どれでも構いません。
人によって正解は違います。
だから、
「世間的に良い会社」を探すのではなく、「自分にとって今より良い会社」を探す。
これが転職先を選ぶうえで、とても大切な考え方です。
おわりに
最後にもう一度。
転職先が今より悪くなる可能性を、完全にゼロにすることはできません。
だから怖いのです。
でも同じように、
今の会社に残れば必ず幸せになれるという保証もありません。
大切なのは、
「転職したら失敗するかもしれない」
という未来だけを見ることではありません。
今の会社にあと3年残った未来。
転職して新しい会社で働いている未来。
両方を想像してみてください。
そして自分に問いかけます。
「自分は、仕事の何を変えたいのだろう?」
その答えが分かれば、転職先を見る基準も少しずつ明確になります。
転職するかどうかを今日決めなくても構いません。
会社を辞める必要もありません。
まずは、
自分には今の会社以外にどんな選択肢があるのかを知る。
そこから始めればいいのです。
転職活動をした結果、今の会社に残るのも一つの答え。
より自分に合った会社が見つかれば、そこへ進むのも一つの答え。
転職とは、人生を一発勝負に賭けることではありません。
これからの自分が、どんな働き方をしたいのかを考えるための一つの手段です。
「今より悪かったらどうしよう」
と考えるだけでは、答えはなかなか出ません。
そんなときは、
「今より悪いか、良いか」ではなく、「自分が変えたいことを変えられるか」
という基準で会社を見てみてください。
その基準を持つだけでも、転職に対する不安は少しずつ「判断できる不安」に変わっていきます。