
何も考えられない現場従業員を「考えて動く人材」に育てるために必要なマインドと行動
はじめに
トヨタの現場力はなぜ世界一と称されるのか? その答えは「日々改善を積み重ねる文化」と「徹底したフォロー」にあります。今回は、現場で“何も考えられない”従業員が、自ら考え、動ける人材になるために必要な考え方と実践行動を、元トヨタマンの教えから学び、順序立てて解説します。
ステップ1:現場は“毎日変化”して当たり前というマインドを根づかせる
「現場は毎日変化させないといけない」
この言葉が、すべてのスタート地点。現場は放っておくと“停滞”し、無駄が蓄積します。改善とは、日々人物・設備の無駄を見つけて排除すること。つまり、昨日と同じ現場であってはならないのです。
行動ポイント:
- 毎朝、昨日と違う「改善箇所」を必ず一つ見つける
- 不要な物を捨て、動線や棚のレイアウトを変える

ステップ2:教えたら終わりじゃない。「フォローする」ことが指導の本質
「やってみせ、やらせてみせ、フォローする」
多くの現場では「教えた=終わり」となってしまいます。しかし本当に育つ人材にするには、“体で覚えるまで”フォローが必要。トヨタでは部下の行動を観察し、改善点を見つけ、繰り返し指導します。
行動ポイント:
- 作業を任せた後、毎日短時間でも観察・対話する
- できていない部分は言語化して再指導
- 安全・品質ルールの徹底を繰り返しチェック
ステップ3:「標準化」とは、誰がやっても同じ成果が出る仕組み
「見て覚えろ」は現代では通用しない
若い作業者に“暗黙知”をそのまま伝えても理解されません。「誰がやっても同じものができる」ことが、本当の教育です。
行動ポイント:
- 作業の段取り・道具の位置・手順をすべて見える化
- 経験や勘に頼らず、「なぜこのやり方なのか」を理論化
- 新人指導マニュアルや動画を整備する
ステップ4:「多分やっている」ではなく「現場で見て確かめる」
「多分」ではダメ。現場に行って“確認”すること。
口で指示するだけでは、実行されたかどうかはわかりません。必ず自分の目で見て、できているかを判断します。
行動ポイント:
- 指示後は必ず現場に行く(現地現物)
- 期限付きで行動を依頼し、その日にチェックする
- できていなければその場で再指導

ステップ5:作業者に「給料は誰からもらっているか?」を教える
「給料はお客様からもらっている」
この原点を持つと、現場の作業一つ一つが顧客に直結していることに気づきます。上司に言われたからやる、ではなく「誰のためにやっているか」がわかるようになります。
行動ポイント:
- 朝礼などで“お客様視点”を繰り返し伝える
- 会社が喜ぶのではなく、顧客が満足するか?を基準に考える
ステップ6:ルール・約束は“徹底して守らせる”文化を作る
「今日はこれを守ろう」「2週間後に見に来る」
安全ルールや改善計画は、守られて初めて意味があります。上司が“見に来る”からこそ、現場が緊張感を持って守ろうとします。
行動ポイント:
- 目標や改善点に期限を決め、結果を見る
- 朝礼で今日の重点ルールを1つ伝え、夕方に必ず確認

ステップ7:捨てることで、見える世界が変わる
「1週間動かないものは捨てろ」
トヨタでは“捨てる”ことに恐れがありません。捨てることで初めて「本当に必要なもの」が見えるようになるのです。
行動ポイント:
- 使用頻度の基準(例:15日使わなければ一時保管、さらに15日で廃棄)を設ける
- 捨てる前に社内共有して確認
- 物が少ないことで改善意識が自然と芽生える
ステップ8:現地で恥をかけ。それが本当の成長になる
「教えることは、自分の理解を深めること」
いくら技術があっても、それを“教える力”とは別物。インドネシアで失敗を経験した元トヨタマンは、理論や言語化の必要性を痛感しました。
行動ポイント:
- 現地指導を想定して作業を言語化してみる
- 見せて教えるだけでなく、理屈も併せて伝える
- 知識を体系化し、資料化する
おわりに
人は自然には育ちません。仕組みとマインド、そして“徹底したフォロー”こそがトヨタの人材育成の真髄です。 この8ステップを繰り返すことで、“言われたことだけやる人”から“考えて動く人”への変化が始まります。
あなたの現場でも、今日からこの考え方を実践してみませんか?
参考
トヨタの口癖 OJTソリューションズ著