慶應教授が語る「伝わるコミュニケーション」の本質！仕事で差をつける思考法
要約
慶應義塾大学教授の今井むつみ先生は、自身の著書や研究内容について語っています。今井先生は、これまで言語や認知科学の専門的な研究を行ってきましたが、日経BP社からの依頼で、ビジネスパーソン向けに「スキーマ」という概念を解説する書籍を執筆しました。
「スキーマ」とは、人が経験から無意識のうちに作り上げた暗黙の知識の塊です。 このスキーマがあるからこそ、私たちは他人の話を聞いて理解することができます。しかし、このスキーマは人それぞれ異なるため、話が通じない原因となります。
今井先生は、コミュニケーションにおいて**「結論だけを伝える」ことの危険性**を指摘します。結論だけでは、その背後にある「思考のプロセス」が伝わらず、相手の持つスキーマと衝突してしまう可能性があるからです。特に、言語は情報の大部分を捨てて抽象化するため、行間を読み取る必要があります。この行間を埋めるのが、聞き手のスキーマです。
また、スキーマの根底には「感情」があると今井先生は言います。例えば、上司と部下では、立場や経験の違いから、仕事に対する目標や関心事（スキーマ）が異なります。上司は会社全体のことを考え、部下は自分のタスクを優先するため、お互いの話が噛み合わないのは必然だというのです。
現代社会では、多様な価値観を持つ人々が共に働くことが増え、話が通じない場面が増えています。 解決策として、今井先生は相手の視点に立って考えることの重要性を説きます。特定の層だけでなく、性別、年代、デジタルの得意・不得意など、様々な視点から物事を捉えることで、思わぬ落とし穴を回避できると語ります。
また、AI時代におけるコミュニケーションの本質についても言及しています。結論だけでなく、その結論に至った「思考の過程」を伝えることが、AIにはない人間ならではの重要なスキルであり、相手との信頼関係を築く鍵になると締めくくっています。
何度説明しても話が通じないのはなぜ？仕事と転職で差をつける「スキーマ」活用術
「なんで何度説明しても話が通じないんだ…」
職場の上司や同僚、あるいは転職先の面接官に、そう感じたことはありませんか？
結論から話しているのに、なぜか伝わらない。丁寧に解説しているのに、どうもピンとこない反応をされる。
実はその原因、あなたの話し方にあるのではなく、相手の「スキーマ」という心の仕組みにあるかもしれません。
今回は、慶應義塾大学教授の今井むつみ先生の言葉をヒントに、若手ビジネスパーソンが知っておくべき「スキーマ」の概念と、それを仕事や転職に活かすための方法を解説します。
1. 「スキーマ」を知らないと話は通じない
まず、そもそも**「スキーマ」**とは何でしょうか。
専門的には少し複雑ですが、簡単に言うと、**「これまでの経験から無意識に作り上げた知識や考え方の枠組み」**のことです。
例えば、「新しいプロジェクトを始めよう！」と上司が言ったとします。
- 上司のスキーマ：「会社全体の売上を上げるチャンスだ。新しい市場を開拓して、組織を成長させよう！」
- 部下のスキーマ：「また新しいタスクが増えるのか。自分の今の業務量はどうなるんだろう…評価は上がるのかな…」
このように、同じ言葉を聞いても、立場や経験によって受け止め方（スキーマ）は全く違います。
「話せばわかる」というのは、お互いが同じようなスキーマを持っているという前提に立った幻想なのです。
2. 結論だけでは「思考の過程」が伝わらない
ビジネス書などでよく**「結論ファースト」**が良いと言われますが、今井先生は結論だけを伝えることの危険性を指摘しています。
なぜなら、結論だけでは、あなたがその結論に至った**「思考の過程」がすっぽり抜け落ちてしまう**からです。
例えば、新しい業務ツール導入の提案をする場合を考えてみましょう。
- 結論ファーストで伝える場合：「Aというツールを導入すべきです」
- 思考の過程を含めて伝える場合：「現在、手作業でデータ入力に3時間かかっています。Aというツールを導入すれば、この作業が30分に短縮され、空いた時間で顧客分析に集中できます」
後者の場合、なぜその結論に至ったのか、具体的なメリット（思考の過程）が明確に伝わりますよね。
特に、新しい仕事や転職先で、まだお互いのスキーマが共有できていない状況では、結論だけでなく、その思考の過程を丁寧に説明することが、相手に「なるほど、そういうことか」と納得してもらうための重要な鍵になります。
3. スキーマの根底にある「感情」に寄り添う
今井先生は、スキーマの根底には**「感情」**があると述べています。人はまず感情的に「この人の話は聞きたい」「この人の言うことは信用できる」と感じてから、理屈を理解しようとします。
- 「あの人はいつも私の話を真剣に聞いてくれるから、信頼できる」
- 「この提案は、私たちのチームの負担を減らすことを考えてくれているな」
このように、相手への共感や思いやりが感じられると、相手は心を開き、あなたの話を受け入れやすくなります。
「この人は自分のことを理解してくれている」という安心感は、相手のスキーマとの衝突を和らげる効果があります。仕事や転職の面接では、相手の課題や立場を理解している姿勢を示すことが、信頼関係を築き、あなたの言葉をより深く届けることにつながります。
4. 自分の「当たり前」を疑い、多様な視点を持つ
私たちは、自分の経験から培ったスキーマを「当たり前」だと思い込みがちです。
- 「このやり方が一番効率的だ」
- 「この業界ではこれが常識だ」
しかし、転職して新しい環境に飛び込んだり、多様なメンバーとチームを組んだりすると、その「当たり前」が通用しないことが多々あります。
新しい企画を立てる際、ITに詳しい人だけで進めるのではなく、「ITが苦手な人はどう感じるか？」という視点を取り入れることで、より多くの人に喜ばれるサービスが生まれるかもしれません。
自分のスキーマは、あくまで数ある視点の一つに過ぎないと意識すること。そして、相手の「当たり前」に耳を傾ける姿勢を持つことが、コミュニケーションを円滑にし、新しいアイデアを生み出す力になります。
おわりに：今日から実践できる3つの行動
「話が通じない」と感じたときは、ぜひ以下の3つの行動を試してみてください。
- 「なぜ？」を意識して話す：結論だけでなく、なぜその結論に至ったのかという思考の過程を丁寧に説明する。
- 相手の立場で考える：相手の目標や関心事は何かを想像し、相手のスキーマに合わせた言葉を選ぶ。
- 自分の「当たり前」を疑う：自分の意見が全てだと思わず、多様な人々の視点に耳を傾ける。
これらの行動は、仕事や転職活動で「この人なら信頼できる」という印象を与え、あなたのキャリアを大きく前に進める力となるでしょう。
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あなたの成功を願い、記事を終わります。
参考
PIVOT 公式チャンネル 【何度も説明しても話が伝わらない理由】認知科学と言語の第一人者・今井むつみ／結論ファーストはNG／話せばわかるは幻想なのか？／なぜ部下に話が伝わらないのか？【PIVOT TALK】 - YouTube